「世ノ介先生」

「世ノ介先生」
2000.4.25  角川文庫
世ノ介先生は、かわいくて風変わりな口へらずの先生。
私のところへ遊びにいらしては、いろいろ文句をおっしゃいますが、
きっとこころさびしいのでしょう。
笑顔がぽわんとうかぶ、ほのぼのストーリー。

あとがき

私は、自分という人間に関しては、補足したいことも、不確かさも、分からなさもあるのですが、自分が書いたものや作ったものに関しては、まったく何の説明も思い浮かびません。不完全なところもそのままに、ドンと胸へぶつかりたいです。どんどんとありのままの姿で人々の目の前へ立ちたいです。どんなふうに思われてもかまわないのです。いや、どんなふうにも思われたいのです。
自由への強い憧れ。それが願いのすべてでした。今も願い続けています。
驚くほど伸び縮みする人の心。せまいところも広いところも深いところも浅いところもある。自分で思っている以上に、自分で作った心の輪郭は実物より小さい。もっと心は可能性を秘めているのだろう。広さや密度や、色あいその他において。
なによりも、人との出会いや人を知っていく過程は、宇宙より遠い旅だ。孤独であるがゆえに心あたたまる、感動をはらんだサスペンスだ。どんなに近くにいる人とも、どんなに遠くの人とも、興味を持ち、かかわりあい、知ろうとするならその深さは底なし沼だ。
それで、私の話も次から次へと、終わらなくなるのです。