「微笑みながら消えていく」(単行本)

「微笑みながら消えていく」(単行本)
1989.11.25 角川書店
写真と詩による単行本。
「パッと笑って 飛びたつ鳥のように
サッとはじまり サッと終わる
なんてことない人生 素敵な僕ら」

あとがき

    微笑みながら消えていく
    悲しみのようになりたかった

風景のようにきれいで静かな本を作りたくて作りました。自由帳のように自由に作りました。言葉は、心を心へ伝えるものです。心は、矛盾していたり混沌としていたりあやふやだったりします。そういううまく口で言えない何かを伝えることができたらといつも思っています。
私が、心をこめて詩を書けることのひとつは、それを読んだ人達の何かよくわからない大きな力によってです。静かな気持ちでまっすぐに考えることができるのは、同じように感じることのある人々に、支えられたり力づけられたりしているからです。誰かが私の作品に感動してくれる同じ理由で、私もその誰かに感謝しています。そして、私の心からいつもいつもたくさんの詩があふれてきます。
それから、他の理由はというのは、私が願う、ずっと小さい頃からの遠い気持ちというもので、それは私や誰かにとっても、ひどく大切なある気持ちで、それというのは時間や場所や状況や理由といったものから自由であるところの、ひとつの気持ちだろうと思われます。そのことを、例えば私が仮に八千の詩を書く人として存在するとするならば、その八千の詩全部を通して、そのひとつの真理の気持ちを画きたいと思うのです。だから、今はまだ理解できないことがあるかも知れませんが、すべてがあるひとつのものの一部であると思って、ずっと見ていて下さい。そして、今はまだ私に能力のないことがあるとしたら、これからその力がついた時に自然に表現されると思うので。
私たちが力づけられているあれらのものというのは、確かに力づけられるに値するものだと私は思っているので、失望することなくこれからも、この複雑で単純な世の中を冷静に泳いでいきましょう。できれば、やさしくて純粋なものを見落とさずに。もちろん、悲しくて透明なものから目をそらさずに。にっこりさせられるって、素敵なことです。