その人は展望台から夕方の景色を眺め
「しょせん人はわかりあえないものなんだから」
と言った
その言葉は灰色の空を見ていた私の心を
静かに横切った
そうだろうか
わかりあえないものだろうか
私は寂しさを感じるとともに
なぜかわからないが幸福も同時に感じていた
それでもあなたは今
ここに私といますよね
灰色の空はだんだん暗くなり
建物の形はしだいに闇にとけ
灯りだけが光りはじめる
それ以上の言葉はなく
未来になんのあてもない私たちは
かえってそのことで気持ちは暗さを免れ
それぞれに何かを思い
それぞれにほほ笑んだ