「事情」

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人を束縛したり、命令する人は、そのされる人を本当は必要としているのだと思う。たとえば、Aという人がBという人を束縛している場合、AはBに対して強者のように見えるけど、実際はBの存在が必要で、その点でAの方が立場は弱い。一見、Aの方が性格的に強そうに見えBの方が弱く見えるが、BはAを捨てずに(Aから逃げずに)、Aのためにその関係を維持してあげている。表面ではなく奥でそのことを両者は知っているので、人からはAに虐げられているBというふうに見えるかもしれないけど、ふたりの世界の中では、Bの方が立場は上だ。Aの要求が高まるほど、弱そうに見えるBはますます強くなり、強そうに見えるAはますます弱くなるので、束縛や命令はエスカレートしていくことがある。Bも苦しいが、Aも苦しい。 人と人との関係がわかりにくいのは、そういう、一見こう見えるけど実はそうじゃないっていう絆でつながっているからだ。ひとつじゃなくいくつもの、双方で編みあげた絆で。 他人から見てもわからない関係性が当事者たちにはある。だから、人のことを簡単に評価できないなと思う。事情があるのだ。どんな人にも。